「顔が同じで見分けがつかない」

このところは見なくなったけど、KARAプロジェクトのティーザーが出てた頃は、Baby KARAについて、「みんな同じ顔で見分けがつかない」的な書き込みがKARAファンの中からも出ていて(とはいっても目に入ったのは数人程度ですが)、んー、と思ったわけですが。

まあ、KARAプロジェクトが嫌だからってのが大きくて、ようするに、「気に入らない」っていう不快感を表明するためのお手軽な表現として「みんな同じ顔で見分けがつかない」的なことを言っていたのだろうと思う。



たとえば、嫌韓ネトウヨレイシストの方々とかも、KARAや少女時代について、「顔が同じで見分けがつかない」的なことを言うのがとても好きなわけだけど、これも、ただただ韓国人をバカにしたいという欲望から「顔が同じで見分けがつかない」みたいな表現を選んでるわけで。こっちは完全にレイシズムだから論外だけど。


そして、欧米とかでも、アジア人とかをバカにする人は「アジア人は同じ顔ばかりで見分けがつかない」「日本人は顔が同じで見分けつかない」みたいなことを言いたがるわけで。(最近はこういうのは「差別」「レイシズム」って認識がかなり広まって共有されてきたから公で言ったり書いたりする人はあんまりいないと思うけど。)昔は「黒人は同じ顔だから見分けがつかない」とか言ってたんだろうなあ、とか。



たしかにね、悪意があってわざと「顔が同じで見分けがつかない」と言いたがるのとはまた別に、実際に見分けがつきにくいこともあると思う。でもそれって、ほんとに真面目によく観察しても客観的に似てるという人の場合は別にして、大抵は慣れと観察不足の問題だよね。


慣れというは、その人種なり民族なりの属性のいろんな人を見慣れているかいないか、という話。○○人が、△△人ばかりの映画を見て俳優の見分けがつかず誰が誰だかわからなくなる、ってのはよくある話だけど、それは△△人が客観的に「顔が同じで見分けがつかない」のではなく、見る側の問題で、見る側が慣れてないから見分けがつきにくい(それと観察不足)、って話で。


そりゃ、自分だって、たとえば、少女時代やPerfume東方神起やBigBangやSMAPや嵐や2ne1やレインボーやA-JAXやT-araやf(x)あたりのみなさんはちゃんと誰が誰だかよくわかるけど、ExoやApinkやクレポや48グループやキスマイやワンダイレクションあたりやその他たくさんのみなさんとかは全然見分けつきませんよ。でもそれは、客観的に、前者のみなさんが「違う顔」で後者のみなさんが「同じ顔」なわけではなく、ただ単に自分が後者のみなさんを観察不足で顔をちゃんと知らないせいなわけで。



日常で、KARAが好きとかK-POPファンだとかそういうことを言うと、「顔が同じ」的なことを言いたがる方々が知人とかにいたりすることもあるだろうけど、そういうときは、「そりゃ観察不足で知らないだけでしょ」と。

「韓国人は」を強調するレイシストな要素があるタイプには、「アジア人とか日本人とか黒人とかをバカにしたがる人は、○○人は同じ顔ばかりとか言いたがるんだよ、だからそういうこと言うのやめた方がいいよ」と言ってあげましょう、と思います。



追記。

そもそも、○○人のことをお手軽に一般化して「○○人は〜〜だ」みたいなことを言うのはあまりしない方がいいというか、言うなら危険性を自覚して丁寧に慎重にした方がいいと思うわけですが、とある映画になかなか見事なシーンがあったのを思い出した。

ジョージ・クルーニーの『シリアナ』。

アラブ人たちのパーティーに参加してるアメリカ人二人の会話。

A: アラブ人って家族思いだよね。てかこの発言ってレイシズム(人種差別)?

B: 良いことについてなら大丈夫。


まあ、とにかく、あまりしない方がいいのは、自分の属さない属性の人たちについてお手軽に一般化してネガティブなことを言う、ってことでしょうか。○○人が自分たち○○人について「○○人って〜〜だ」とネガィティブに言うのとは違うわけで。

日本人が「日本人ってアホだよなあ」というのと、アメリカ人が「日本人ってアホだよなあ」というのは違う、と。日本人嫌いの差別主義者のアメリカ人が「日本人ってアホだよなあ」と自省的に言ってる日本人の発言を利用する、みたいな場合もありますが、それは利用する人が悪い。


あと、韓国人などをバカにするような発言について、それはレイシズム(人種差別)と言うと(ようするに「ヘイトスピーチ」)、日本人と韓国人は同じ人種だろ、とか言う人がいまだにいますが、たとえば人種差別撤廃条約ではこう書いてあります。


人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)

第1条

1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html

まあ細かい話を置いておいて、条約から、特に最近世間的にも話題になることが多くなってきたヘイトスピーチ問題に関するこの部分も引用しときます。


第4条

 締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って、特に次のことを行う。

(a)人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること。

(b)人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。

(c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html